はむはむ絵本 ~2児のママがおすすめする絵本のご紹介~

3歳男の子と6歳女の子のママです。これまでに読み聞かせてきた絵本を紹介しています。

【読書感想文/レビュー】クリスマスにまにあわない / ひろたまお・ニーヤ・アキ

クリスマスの焦燥感と温かさ――絵本『クリスマスにまにあわない』を読んだ感想

「クリスマスにまにあわない」。このタイトルを見ただけで、クリスマス直前のバタバタとした雰囲気、そして一抹の不安が感じられます。サンタクロース出版舎が贈る「100のクリスマス物語」シリーズ第3弾である本書は、そのタイトル通り、クリスマスに間に合わなくなるかもしれない、様々な出来事を描いた絵本です。しかし、単なる焦燥感を描いた作品ではなく、読後には温かい気持ちと、クリスマスの真髄を改めて考えさせられる、奥深い内容に仕上がっていると感じました。

まだ間に合う?ハラハラドキドキの展開

物語は、クリスマスイブの朝に始まります。主人公は、クリスマスの準備が全く終わっていないことに気づき、大慌てになります。プレゼントのラッピングは終わっていない、クリスマスツリーは飾られていない、そして、何より重要なのは、サンタクロースへの手紙がまだ書かれていないのです。

時間との闘いが始まる展開は、読者にも緊張感を与えます。ページをめくる度に、主人公の焦燥感が伝わってきて、まるで自分自身がクリスマスの準備に追われているかのような感覚に陥ります。プレゼントの買い出しに走ったり、ツリーの飾りつけに悪戦苦闘したり、手紙を必死に書こうとしたりする主人公の姿は、コミカルでありながらも、クリスマス直前の忙しさをリアルに表現しています。

特に印象的だったのは、手紙を書くシーンです。主人公は、サンタクロースへの感謝の気持ちや、来年欲しいプレゼントを書き綴ろうとするのですが、なかなかうまく言葉が出てきません。これは、クリスマスのプレゼントにばかり目が行きがちですが、本来クリスマスが持つ意味、家族や友人との絆の大切さを改めて考えさせる重要な場面だと感じました。

物語は、予想外の出来事や、主人公のちょっとしたミスによって、さらにハラハラドキドキの展開をみせます。果たして、主人公はクリスマスに間に合わせる事ができるのでしょうか。ページをめくる手が止まらない、まさに手に汗握る展開が続きます。

クリスマスの真の意味を問いかける

しかし、この絵本は単なる「間に合う・間に合わない」という話ではありません。主人公がクリスマスの準備に追われる中で、家族や友人との触れ合いを通して、クリスマスの真の意味を徐々に理解していく様子が描かれています。

例えば、プレゼントを買いに行く途中で出会った困っている人を助けるシーンや、家族と一緒にクリスマスツリーを飾り付けるシーンなど、一見するとクリスマスの準備とは関係ないように見える出来事が、実は主人公の心の成長に大きく貢献しているのです。これらの出来事を通して、クリスマスはプレゼントだけではない、大切な人と過ごす時間こそが何よりの贈り物であるということに、主人公は気づいていきます。

この気づきは、読者にも大きな感動を与えます。クリスマスの商業化が進む現代において、この絵本は、クリスマス本来の温かさを思い出させてくれる、大切なメッセージを伝えていると感じます。

絵本の魅力:繊細な描写と温かい色彩

絵本の絵柄も、物語の魅力を高めています。繊細なタッチで描かれたイラストは、クリスマスの温かい雰囲気を表現しており、見ているだけで心が安らぎます。暖色系の色彩が中心で、特にクリスマスツリーのキラキラした装飾や、プレゼントの鮮やかな包装紙などは、見ているだけで幸せな気持ちになります。

また、主人公の表情や仕草も細かく描かれており、その感情が手に取るように伝わってきます。焦っている表情、困っている表情、そして、最後に安堵の表情へと変化していく主人公の姿は、読者の共感を呼び、物語にさらに深みを与えています。

読後感:忘れかけていた大切なこと

読み終えた後、私は自分が忘れかけていた大切なことに気づかされました。それは、クリスマスの本来の意味、そして大切な人との時間です。プレゼントの有無ではなく、家族や友人と過ごす温かい時間こそが、クリスマスの真の喜びであることを、この絵本は優しく教えてくれます。

子供向け絵本ではありますが、大人になって忘れかけていたクリスマスの温かさ、大切な人の存在を改めて感じさせてくれる、そんな力を持つ絵本です。クリスマスシーズンだけでなく、一年を通して、何度でも読み返したいと思える、そんな一冊です。

まとめ:クリスマスの温かさを再発見できる絵本

『クリスマスにまにあわない』は、クリスマス直前の慌ただしさや、時間との闘いを描いたハラハラドキドキのストーリー展開だけでなく、クリスマスの真の意味を改めて考えさせてくれる、心温まる絵本です。繊細なイラストと温かい色彩、そして忘れかけていた大切なことを思い出させてくれるメッセージは、大人にも子供にも強く響くでしょう。クリスマスシーズンはもちろん、一年を通して、家族や友人と大切な時間を共有しながら、この絵本を開いてみてはいかがでしょうか。きっと、クリスマスの温かさを再発見できるはずです。 この絵本は、単なる物語を超えて、クリスマスの精神、そして人生の大切な何かを私たちに思い出させてくれる、そんな力を持っていると感じます。 ぜひ、多くの人に読んでいただきたい、そんな一冊です。