はむはむ絵本 ~2児のママがおすすめする絵本のご紹介~

3歳男の子と6歳女の子のママです。これまでに読み聞かせてきた絵本を紹介しています。

【絵本レビュー】プラスチックマンとサンゴ / きよたけいこ

プラスチックマンとサンゴ:小さな勇気が未来を変える

本書『プラスチックマンとサンゴ』は、前作『プラスチックマン』に続く、海への愛と環境問題への警鐘を込めた感動的な絵本です。プラスチックごみという現実的な問題を、プラスチックマンというユニークなキャラクターを通して描き出すことで、子どもたちにも分かりやすく、そして心に響くメッセージを伝えています。前作を読んだ読者には、プラスチックマンの成長と新たな冒険が待ち受けており、初めて読む読者にとっても、その魅力的な世界観にすぐに引き込まれることでしょう。

海の悲劇とプラスチックマンの葛藤

物語は、プラスチックごみによって汚染された海を描写することから始まります。生き物たちがプラスチックごみに絡まり苦しむ様子、マイクロプラスチックを摂取して衰弱していく魚やサンゴの描写は、現実の海の現状を想起させ、読者の心に重い影を落とします。プラスチックマン自身も、自分が海の汚染の一因であることを自覚し、深い悲しみと葛藤を抱えています。この葛藤は、プラスチックごみ問題に対する私たちの複雑な感情を巧みに表現していると言えるでしょう。自分が環境問題に加担しているかもしれないという罪悪感、そして、それをどうにかしたいという強い願望。そんな葛藤は、子供だけでなく大人にも響くものがあります。

特に印象的だったのは、プラスチックマンが涙を流すシーンです。その涙が妖精となり、彼と共に海を守る行動を起こすというファンタジー的な展開は、一見突飛に思えるかもしれませんが、この物語のテーマを象徴する重要なシーンだと感じます。涙は悲しみや悔恨の象徴であり、同時に、未来への希望や行動への意思の表れでもあります。涙の妖精という存在は、私たち一人ひとりの小さな努力や勇気が、大きな変化を生み出す可能性を示唆しているのではないでしょうか。

希望に満ちた連携と行動

涙の妖精との出会い以降、プラスチックマンは単独で行動するのではなく、様々な生き物たちと協力し、海を浄化しようと奮闘します。この連携は、環境問題解決には個人の努力だけでなく、社会全体での協力が不可欠であることを示唆しています。絵本を通して、子どもたちは協力することの大切さ、そして一人ひとりができることを考え、行動することの重要性を学ぶことができるでしょう。

また、プラスチックマンの努力は、世界中の人々に影響を与え、海を守る行動へと繋がるという展開も、大きな希望を与えてくれます。これは、環境問題に対する個人の小さな行動が、やがて大きな波となり、世界を変える力となり得ることを示しているのではないでしょうか。

教育的な側面と親子の共感

本書は、SDGs14番目の目標「海の豊かさを守ろう」に基づいていると紹介されていますが、単なる啓蒙的な絵本ではなく、魅力的なストーリーとキャラクターによって、自然と環境問題への関心を高めてくれます。そのため、子どもたちは楽しみながら、海の環境問題について学ぶことができるでしょう。

さらに、親子の会話のきっかけにもなる点も、本書の大きな魅力です。絵本を読み終えた後、子どもと海について、プラスチックごみ問題について、そして自分たちが何ができるのかについて語り合う時間は、かけがえのないものになるでしょう。絵本を通して、親子の絆を深めることができる点も、本書の大きな価値です。

絵本の魅力と構成

鮮やかで美しいイラストは、海の美しさや生き物たちの生命力を際立たせ、同時にプラスチックごみの悲惨さを効果的に伝えています。絵本の構成も非常に分かりやすく、子どもたちがストーリーを理解しやすいように工夫されていると感じます。文字の量も適切で、読み聞かせにも最適です。

特に、プラスチックマンの表情の変化は、彼の感情を的確に表現しており、読者の共感を呼び起こします。悲しみ、葛藤、希望、そして喜び。様々な感情が、彼の表情を通して繊細に描かれている点が素晴らしいです。

未来へのメッセージ

『プラスチックマンとサンゴ』は、単なる環境問題を訴える絵本ではありません。それは、希望と勇気、そして未来へのメッセージを込めた、感動的な物語です。私たち一人ひとりが、プラスチックマンのように小さな勇気を持って行動すれば、必ず海を守り、より良い未来を築き上げることができるという確かな希望を、この絵本は私たちに与えてくれます。

本書は、子どもだけでなく、大人にも強くお勧めしたい一冊です。プラスチックごみ問題について改めて考えさせられるだけでなく、私たち一人ひとりができること、そして未来への希望を再確認できる、そんな力強いメッセージが込められています。 この絵本が、多くの人々の心に響き、環境問題への意識を高める一助となることを願っています。