はむはむ絵本 ~2児のママがおすすめする絵本のご紹介~

3歳男の子と6歳女の子のママです。これまでに読み聞かせてきた絵本を紹介しています。

【読書感想文/レビュー】ともだちいろいろ / たかいよしかず

『ともだちいろいろ』― 魔法のインクが織りなす、温もりと想像力の物語

本書『ともだちいろいろ』は、革新的な「メタモカラー」という温度変化インクを用いた、実にユニークな絵本です。30℃前後の熱を加えると色が消え、25℃以下で黒色に戻るというその特性は、単なる視覚的な驚きを超え、読み手、特に子どもたちに、想像力と創造性を掻き立てる不思議な体験を与えてくれます。 単純な色の変化という枠を超え、本書は「友情」という普遍的なテーマを、繊細かつ大胆に描き出している点に、大きな魅力を感じました。

メタモカラーが生み出す、インタラクティブな読み聞かせ体験

まず特筆すべきは、このメタモカラーの存在感です。黒く印刷された絵は、指先で触れると、まるで魔法のように色が消えていきます。子どもたちは、この不思議な現象に驚き、同時に、自ら絵に働きかけるという、従来の絵本にはないインタラクティブな体験を得ます。読み聞かせの場面を想像してみてください。親御さんがページをめくりながら、優しく絵本の世界を語りかける。そして、子どもはページに触れ、自ら色が消える様子を見届ける。この共同作業は、単なる読書体験ではなく、親子の温かい触れ合いを生み出す貴重な時間となるでしょう。

さらに、色が消えるという不可逆的な変化がない点が、本書の大きな強みです。何度でも色が消え、元に戻るという性質は、子どもたちの好奇心を満たし、繰り返し読むことを促します。絵本を読み終えた後も、何度もページを触っては色を消し、また元に戻すという遊びを通して、本書は子どもたちの五感を刺激し、飽きさせない工夫が凝らされています。これは、単なる「読み物」ではなく、「触れ合い、体験する」媒体としての絵本としての新しい可能性を示唆していると言えるでしょう。

シンプルながらも奥深い、友情の物語

メタモカラーの視覚的な魅力に目が奪われがちですが、本書の真価は、そこに描かれた「友情」というテーマにあります。具体的なストーリーは明かされませんが、絵柄から想像されるのは、様々な生き物たちとの触れ合い、喜び、そして時に困難に直面する様子です。黒く描かれた生き物たちは、私たちの体温に触れることで、まるで心を開くように、少しずつ姿を消していきます。この「消える」という行為は、単に色の変化ではなく、友情の深まり、心の距離の縮まりを象徴しているように感じられます。

本書には言葉は少なく、絵柄が中心となっています。しかし、そのシンプルな絵柄の中に、深い感情が込められています。生き物たちの表情、背景の描写、そして何より、メタモカラーが演出する色の変化は、言葉では言い表せない複雑な感情を、読者に静かに語りかけてきます。言葉の少ない絵本だからこそ、読者一人ひとりが、それぞれの感性で物語を解釈し、自由に想像力を羽ばたかせられるのです。

想像力を育む、創造性を刺激する

本書は、子どもたちの想像力を育む上で、非常に効果的なツールとなるでしょう。言葉の少ない絵本は、子どもたちに自ら物語を創造する余地を与えます。消えていく絵から、どのような物語が想像できるか? それぞれの生き物たちはどんな関係にあるのか? なぜ色が消えるのか? そういった問いかけを通して、子どもたちは想像力を自由に巡らせ、独自の解釈を築き上げていくことができます。

さらに、メタモカラーを使った創作活動への発展も期待できます。子どもたちは、本書を参考に、自らメタモカラーを用いた絵を描いたり、工作をしたりすることで、創造性をさらに刺激されるでしょう。本書は単なる絵本ではなく、創造性を育むための、一つの出発点、インスピレーションの源となる可能性を秘めているのです。

大人も楽しめる、奥深い余韻

本書は、子ども向け絵本ではありますが、大人にとっても、十分に楽しめる内容です。シンプルながらも奥深い絵柄、メタモカラーの演出による不思議な体験、そして、言葉にならない感情を呼び起こす物語。これらの要素は、大人にも、静かな感動と、忘れかけていた何かを思い出させてくれる力を持っていると感じます。

日常生活に追われ、忘れてしまっていた大切なもの、例えば、友達との温かい触れ合い、自然の美しさ、そして、自分自身の心の豊かさ。本書は、そういった忘れかけていたものを、優しく思い出させてくれるような、そんな力を持っている絵本です。

まとめ:未来への希望を秘めた、革新的な絵本

『ともだちいろいろ』は、単なる絵本ではありません。メタモカラーという革新的なインクを用いた、インタラクティブで、想像力と創造性を刺激する、新しいタイプの絵本です。友情という普遍的なテーマを、シンプルながらも奥深く、そして美しく表現しています。子どもにも大人にも、静かな感動と深い余韻を残してくれる、そんな素晴らしい一冊です。本書は、未来の絵本に、新たな可能性を示唆する、希望に満ちた作品だと確信しています。 この絵本を通して、多くの子どもたちが、友情の大切さ、そして、自分自身の心の豊かさを実感し、豊かな創造性を育んでいくことを願っています。