はむはむ絵本 ~2児のママがおすすめする絵本のご紹介~

3歳男の子と6歳女の子のママです。これまでに読み聞かせてきた絵本を紹介しています。

【絵本レビュー】どこいったん / ジョン・クラッセン・長谷川義史

絵本『どこいったん』の感想とレビュー

絵本『どこいったん』は、紛失した赤い帽子を探すくまの物語です。一見シンプルなストーリーながら、その独特の語り口とユーモラスな展開、そして予想外の結末は、子どもから大人までを惹きつけ、繰り返し読みたくなる魅力を秘めています。本書の魅力を、いくつかの視点から詳しくレビューさせていただきます。

くまの焦燥感と読者の共感

まず、この絵本の一番の魅力は、赤い帽子を失くしたくまの焦燥感を見事に表現している点です。くまは帽子をどこかに落としてしまい、必死に探します。様々な動物たちに尋ねてみたり、くま自身の記憶をたどりながらくま自身で探したりと、その様子は実にコミカルで、読者も一緒に探しているかのような気分にさせられます。このくまの行動は、私たちが日常生活で何かを失くした時の焦燥感と重なり、深い共感を呼び起こします。探し回るくまの姿は、ただ単に帽子を探しているのではなく、大切なものを失くした不安や苛立ち、そしてそれを取り戻したいという強い気持ちを表しているように感じられます。

大阪弁の妙とユーモラスな展開

本書は、大阪弁で書かれていることが大きな特徴です。関西弁特有の軽妙な言い回しやイントネーションが、くまのキャラクターをより愛らしく、そしてユーモラスにしています。例えば、「どないしたん?」や「ほんまかいな?」といった言葉遣いは、くまの感情をより鮮やかに表現し、物語全体に独特の温かさや親しみやすさを与えています。関西弁に馴染みのない読者でも、そのテンポの良いリズムと親しみやすい言葉遣いに、自然と引き込まれていくことでしょう。大阪弁は、物語の展開を更に面白くするだけでなく、くまのキャラクターに奥行きを与え、より親近感を感じさせてくれます。

シュールな展開と予想外の結末

絵本全体を貫くシュールな展開も、この作品の魅力の一つです。くまが帽子を探し回る過程で出会う動物たちや、その会話は、どこか現実離れしていて、読者をクスッと笑わせます。一見すると、普通の探し物絵本のように見えますが、その展開は予想をはるかに超えて、独特の面白さを生み出しています。そして、物語の終盤、予想外の結末を迎えます。この結末は、読者に「あっ!」と思わせる驚きと、同時にほっとする安堵感を与えてくれます。この意外性こそが、この絵本を何度も読み返したくなる理由の一つです。

心に残る動物たちのイラスト

絵本に描かれている動物たちのイラストも、見逃せないポイントです。独特のタッチで描かれた動物たちは、可愛らしさと少しの奇妙さを併せ持ち、物語の世界観をより一層引き立てています。特に、くまの表情は、帽子を失くした時の焦燥感や、帽子が見つかった時の安堵感など、様々な感情を巧みに表現していて、読者の心に深く響きます。このイラストは、単なる絵ではなく、物語を語る重要な要素の一つとして機能していると感じます。

読み聞かせに最適な絵本

この絵本は、読み聞かせにも最適です。テンポの良い文章と、ユーモラスな展開は、子どもたちの心を掴むこと間違いありません。大阪弁の言葉遣いは、子どもたちにとって新鮮で面白い体験となり、何度も読み聞かせをせがまれることでしょう。また、親御さんにとっても、子どもと一緒に楽しめる、素敵な時間になるはずです。繰り返して読むことで、言葉の面白さやリズム感を自然と身につけることができる点も魅力的です。

幅広い年齢層に支持される理由

『どこいったん』は、子どもだけでなく、大人も楽しめる絵本です。シュールなユーモアや大阪弁の軽妙な語り口は、大人にとっても新鮮な驚きと楽しさを提供します。また、くまの行動を通して、日常の些細な出来事の中に潜む面白さや、大切なものを見失った時の焦燥感といった普遍的なテーマが描かれているため、年齢を問わず共感できる部分が多いのではないでしょうか。

まとめ

絵本『どこいったん』は、単純なストーリーの中に、深い共感、ユーモア、そして予想外の展開が凝縮された、傑作絵本です。大阪弁による軽妙な語り口と、独特のイラストは、子どもから大人までを惹きつけ、繰り返し読みたくなる魅力を持っています。この絵本は、単なる物語ではなく、読者に様々な感情と、忘れかけていた大切な何かを思い出させてくれる、そんな力を持っていると感じます。この絵本を通して、大切なものを探し、そして見つける喜びを、改めて感じさせてくれる一冊です。是非、多くの方に読んでいただきたい、心からおすすめできる絵本です。