はむはむ絵本 ~2児のママがおすすめする絵本のご紹介~

3歳男の子と6歳女の子のママです。これまでに読み聞かせてきた絵本を紹介しています。

【絵本レビュー】ボクたちがずっとそばにいるよ ぬいぐるみのワンとクウ / ツルタユキコ

ボクたちがずっとそばにいるよ ぬいぐるみのワンとクウ ―繊細な心に寄り添う優しい物語―

この度、読み終えた『ボクたちがずっとそばにいるよ ぬいぐるみのワンとクウ』は、繊細な心を持つ子どもたち、そしてその子どもたちを支える大人たちにとって、温かく、そして力強いメッセージを込めた絵本だと感じました。 物語は、学校生活に不安を抱える主人公・ゆうちゃんと、彼女を優しく見守るぬいぐるみ、ワンとクウの交流を中心に展開します。 ゆうちゃんの抱える悩みは、決して特殊なものではなく、多くの子供たちが共感できる普遍的なものだからこそ、この絵本が持つ普遍的な魅力が際立っているのです。

学校という舞台と、繊細な心の描写

物語の舞台は、子どもにとって第二の生活空間である学校です。 友達との喧嘩、先生の厳しい言葉、そして友達が傷つく姿を目の当たりにすることへの辛さ…。ゆうちゃんは、これらの出来事に敏感に反応し、強い不安や悲しみを感じています。 この描写は、決して大げさではなく、繊細な心の揺らぎを丁寧に、そしてリアルに表現しています。 多くの絵本が、子どもの感情を単純化して表現する傾向がある中で、この作品は、複雑で多層的な子どもの心を深く理解し、共感的に描いている点が素晴らしいと感じました。 ゆうちゃんの心の内面が、言葉だけでなく、表情や行動を通して繊細に表現されていることで、読者は自然とゆうちゃんの気持ちに寄り添い、共に悩み、共に喜びを分かち合うことができるのです。

ワンとクウの存在感―無条件の愛情と寄り添う存在

ゆうちゃんの心の支えとなるのが、ぬいぐるみであるワンとクウです。 彼らは、魔法使いのような力を持っているわけではありません。 特別な解決策を提示するわけでもありません。 しかし、彼らはゆうちゃんの言葉を静かに聞き、彼女の感情に寄り添い、そして何より、無条件の愛情で包み込みます。 ワンとクウは、大人とは異なる視点でゆうちゃんを理解し、受け止めようとしています。 その姿は、時に空回りすることもありますが、その不器用さ、必死さが、かえって読者の心を掴みます。 ワンとクウの存在は、現実世界において、大人や友達が必ずしも完璧な理解者ではないということを示唆しており、子どもたちに、自分自身を理解し、受け入れてくれる存在は必ずしも身近な人間だけではないということを教えてくれるように感じました。

強くなろうとするのではなく、そのままの自分を大切にすること

多くの教育的な絵本が、「強くあれ」「頑張れ」といったメッセージを子どもたちに送ることが多いように感じます。 しかし、この絵本は違います。 ワンとクウは、ゆうちゃんに「強くなれ」とは言いません。 むしろ、「そのままの君でいいんだよ」と優しく語りかけます。 これは、現代社会において、特に繊細な子どもたちにとって、非常に重要なメッセージです。 他者と比較して自分を卑下したり、完璧を求めすぎて苦しんだりする子どもたちにとって、「そのままの自分」を受け入れることの大切さを、この絵本は優しく教えてくれます。 このメッセージは、子どもたちだけでなく、大人にとっても心に響くものがあるのではないでしょうか。 私たちは、しばしば他者と比較し、自分自身に完璧さを求めがちです。 この絵本は、そんな私たちにも、自分自身の弱さや不完全さを受け入れ、そのままの自分を大切にすることの重要性を気づかせてくれます。

絵本の魅力―優しいイラストと温かい色使い

絵本としての完成度も非常に高いです。 優しいタッチのイラストは、物語全体の温かい雰囲気をさらに高めています。 色使いも自然で、見ているだけで心が安らぐような効果があります。 特に、ゆうちゃんとワンとクウが一緒にいるシーンは、見ているだけで心が温かくなるような、幸せな気持ちにさせてくれます。 イラストは、言葉では表現できない感情を視覚的に伝え、物語の世界観をより深く理解する助けとなっています。 子どもたちは、イラストを通じて、ゆうちゃんの感情をより深く理解し、共感できるのではないでしょうか。

まとめ―すべての繊細な子どもたちへ贈る、希望の光

『ボクたちがずっとそばにいるよ ぬいぐるみのワンとクウ』は、単なる子供向けの絵本ではありません。 それは、繊細な心を持つ子どもたち、そしてその子どもたちを支える大人たちにとって、希望の光となる一冊です。 学校生活の困難や、自分自身の弱さ、他者との比較による苦しみ…これらの感情と正面から向き合い、そのままの自分を大切にすることの重要性を優しく教えてくれる、そんな力強いメッセージが込められています。 この絵本を通じて、多くの繊細な子どもたちが、自分自身を愛し、そして安心して生きていく力をもらえることを願っています。 そして、大人たちも、この絵本を通して、子どもたちの心の繊細さを理解し、より優しく寄り添うことができるようになることを期待します。 この絵本は、世代を超えて、多くの人々の心に深く響く、感動的な作品だと確信しています。