1歳からのコグトレ「おなじのど〜れ?」:知的好奇心を育む、親子の触れ合いツールとしての魅力
本書「1歳からのコグトレ おなじのど〜れ?」は、遊びを通して子どもの認知能力を育むことを目的とした、アクティブ絵本です。児童精神科医である宮口幸治先生によって開発された「コグトレ」シリーズの一冊であり、1歳児を対象に、形や動作、名前の認識能力を育むための様々なトレーニングが収録されています。読み進める中で、単なる学習教材ではなく、親子の温かい触れ合いを促すツールとしての魅力を強く感じました。
五感を刺激する、多様なトレーニング方法
本書は、単に「絵を見て答えなさい」といった受動的な学習を促すものではありません。絵本の構成自体が、子どもの五感を刺激するようにデザインされている点が素晴らしいです。例えば、「おなじのど〜れ?」という問いに対して、同じ形を見つけ出すトレーニングでは、カラフルで魅力的なイラストが使用されています。子どもは、単に視覚的に情報を得るだけでなく、ページをめくる動作、指で絵に触れる感触など、多角的に絵本と関わっていくことができます。
さらに、各トレーニングは、単純な「同じものを探す」といった内容にとどまらず、様々なバリエーションが用意されています。例えば、同じ形を探すだけでなく、同じ色の物を見つけたり、絵柄の一部が隠れているものを探し出したりと、子どもの集中力を維持しつつ、思考力を徐々に高めていく工夫が凝らされています。この段階的な難易度設定は、1歳児の心身の発達段階をきちんと考慮したものであり、無理なく学習を進められるよう配慮されていると感じました。
親子の積極的な関わりを促す構成
本書は、親子の積極的な関わりを前提とした構成になっています。単に子どもに絵本を見せるだけでなく、親が積極的に声かけをしたり、一緒に遊びながらトレーニングを進めていくことが推奨されています。例えば、「これは丸だね」「これは四角だね」といった言葉かけを通して、子どもは言葉と形を結びつけることを学びます。また、親が一緒に絵を指さしたり、実際に物を使って遊びながらトレーニングすることで、学習の効果を高めることができます。
この親子の協働的な学習スタイルこそが、本書の最大の強みと言えるでしょう。単なる学習教材ではなく、親子のコミュニケーションを深めるツールとしての役割を担っている点に、大きな価値を感じます。1歳児とのコミュニケーションに悩む親御さんにとって、本書は、具体的な遊び方を通して、子どもとどのように関われば良いのかを示してくれる指針となるはずです。
具体的なトレーニング例とその効果
本書では、「かたち」「どうさ」「なまえ」の3つの領域に焦点を当て、それぞれ具体的なトレーニング例が紹介されています。
「かたち」のトレーニングでは、様々な形のイラストが用いられ、同じ形を見つけ出す練習をします。これは、子どもの図形認識能力を育むだけでなく、空間認識能力の基礎を養うことにも繋がります。
「どうさ」のトレーニングでは、例えば「歩く」「走る」「飛ぶ」といった動作の絵が描かれており、子どもにその動作を真似させます。これは、子どもの運動能力の発達を促すだけでなく、言葉と動作を関連付ける能力を育みます。
「なまえ」のトレーニングでは、身近な物の名前を覚えさせるためのイラストが使用されています。これも、子どもの語彙力を豊かにするだけでなく、物事への理解を深める上で重要な役割を果たします。
これらのトレーニングは、どれも日常生活に密着した内容であり、無理なく実践できる点が魅力です。また、繰り返して遊ぶことで、子どもの理解度も深まり、自然と学習効果を高めることができます。
改善点と今後の期待
本書は、多くの点で優れた教材であると感じますが、いくつか改善点も考えられます。例えば、トレーニングの進め方について、もう少し具体的な例が豊富にあれば、親御さんの不安を解消できるのではないかと考えます。また、異なる年齢層の子どもに対応できるよう、難易度別にトレーニング内容が提供されていれば、より幅広い層の親御さんに役立つ教材となるでしょう。
それでも、本書は、1歳児の知的好奇心を刺激し、認知能力の発達を促す上で非常に有効なツールであることは間違いありません。親子の温かい触れ合いを育みながら、子どもの成長をサポートできる、そんな魅力的な一冊です。
まとめ
「1歳からのコグトレ おなじのど〜れ?」は、単なる学習教材ではなく、親子の絆を育みながら、子どもの認知能力を楽しく育むための素晴らしいツールです。本書を通して、子どもと触れ合う時間、共に成長していく喜びを再確認できることでしょう。1歳児を持つ親御さん、そして、子どもの発達に関心のある方々に、自信を持っておすすめできる一冊です。本書を活用することで、子どもたちの未来への可能性を広げる一助となることを願っています。