はむはむ絵本 ~2児のママがおすすめする絵本のご紹介~

3歳男の子と6歳女の子のママです。これまでに読み聞かせてきた絵本を紹介しています。

【読書感想文/レビュー】森でつながるエゾモモンガ / 原田佳実

森でつながるエゾモモンガ:小さな生き物と森の壮大な物語

本書『森でつながるエゾモモンガ』は、北海道の森に暮らすエゾモモンガの生態を、美しく繊細な写真と分かりやすい解説で紹介する写真絵本です。単なる動物図鑑ではなく、エゾモモンガの視点を通して森の多様性と、そこに息づく命の繋がりを深く感じさせてくれる、感動的な一冊でした。

愛らしい姿と、知られざる生態

まず目を奪われるのは、エゾモモンガの愛らしい写真の数々です。まん丸の大きな瞳、ふわふわの毛並み、木の上で軽やかに飛び移る姿…どれもが生き生きとしていて、見ているだけで心が癒されます。まるで、森の中を一緒に冒険しているかのような感覚に陥るほど、写真にはエゾモモンガの個性が表現されています。本書では、単に可愛らしい姿だけを捉えているのではなく、餌を探したり、木の上で休息したり、子育てをする様子など、エゾモモンガの日常が丁寧に描写されています。これらを通して、私たちは彼らの知られざる生態を、まるでドキュメンタリーを見ているかのように知ることができます。例えば、大きな木を巧みに利用して巣を作ったり、移動したりする様子は、彼らの生存戦略の巧妙さを物語っており、感嘆させられます。

森の恵みと、命の繋がり

エゾモモンガは、単独で生きているのではなく、森の様々な生き物と複雑な関係性を築きながら生活しています。本書では、エゾモモンガが食べる木の実や、彼らを捕食する動物など、森の生態系におけるエゾモモンガの位置づけが分かりやすく解説されています。例えば、特定の木の実を好んで食べる様子や、天敵からの逃避行動など、生き残りをかけたエゾモモンガの努力は、私たちに自然界の厳しさと、その中で懸命に生きる生命の力強さを改めて認識させます。 また、エゾモモンガの存在が、森全体の生態系にどのように影響を与えているのかについても触れられており、小さな生き物であるエゾモモンガが、森の健全性を保つ上で重要な役割を果たしていることを知ることができます。

大切な森と、未来へのメッセージ

本書を読み進めていくと、エゾモモンガの生存が、森の豊かさ、特に大木の存在に大きく依存していることが明確に示されます。 古木はエゾモモンガの住処であり、餌となる木の実の供給源でもあります。しかし、近年、森林伐採や開発によって、大木が減少し、エゾモモンガの生息環境は脅かされています。本書は、単にエゾモモンガの生態を紹介するだけでなく、私たち人間が森とどのように関わり、未来へ繋げていくべきなのかという、重要な問いを投げかけています。

巻末Q&A:さらに深く知るための知識

巻末に設けられたQ&Aコーナーは、本書の大きな魅力の一つです。エゾモモンガの生態に関する様々な疑問に、専門的な知識を交えながら丁寧に答えてくれます。 例えば、エゾモモンガの冬眠に関する疑問や、彼らの食性、繁殖方法など、写真だけでは理解できない部分を補完する役割を果たしています。 このQ&Aコーナーを読むことで、より深くエゾモモンガとその周辺環境について理解を深めることができ、読後感はさらに豊かなものとなります。

親子で楽しめる、学びの機会

本書は、写真絵本という形式をとっているため、大人だけでなく子どもも楽しめる内容となっています。可愛らしい写真と分かりやすい文章は、子どもたちの自然への興味関心を高めるのに最適です。 また、巻末のQ&Aは、子どもたちの「なぜ?」という好奇心を満たしてくれるでしょう。親子で一緒に読み、エゾモモンガや森の生態系について語り合うことで、自然環境保護の大切さを学ぶ良い機会となるはずです。

まとめ:森と生き物の繋がりを再認識する一冊

『森でつながるエゾモモンガ』は、単なる動物紹介にとどまらず、エゾモモンガを通して森の大切さ、そして自然と人間の共存について考えさせる、深いメッセージを持つ一冊です。 美しい写真と分かりやすい解説、そして巻末のQ&Aによって、読者はエゾモモンガの生態を深く理解し、同時に自然環境保護の重要性を改めて認識することができます。 子どもから大人まで、幅広い世代におすすめできる、感動と学びに満ちた絵本です。この本を通して、私たち一人ひとりが、森とそこに息づく生き物たちへの理解を深め、未来への責任を担っていくことの大切さを再認識できることを願っています。 まさに、小さなエゾモモンガが、私たちに大きな問いを投げかけてくれる、そんな一冊でした。