はむはむ絵本 ~2児のママがおすすめする絵本のご紹介~

3歳男の子と6歳女の子のママです。これまでに読み聞かせてきた絵本を紹介しています。

【読書感想文/レビュー】世界の納豆をめぐる探検 / 高野秀行・・写真スケラッコ

世界の納豆をめぐる探検:微生物の神秘と食文化の多様性への誘い

「世界の納豆をめぐる探検」は、子どものための科学読み物シリーズ「たくさんのふしぎ傑作集」の一冊です。一見すると、納豆という身近な食品をテーマにした本に、子供たちがどれほどの興味を持つのか疑問に思うかもしれません。しかし、本書は単なる納豆の紹介にとどまらず、微生物の世界、食文化の多様性、そして科学的な探究心といった、子どもたちの好奇心を刺激する様々な要素を巧みに織り交ぜています。読み終えた後には、納豆に対する見方が大きく変わり、微生物や食文化への関心が深まっていることを実感できるでしょう。

知的好奇心をくすぐる、納豆の多様な世界

本書の魅力は、まずその構成にあります。日本の納豆について説明した後、世界各地の納豆に似た発酵食品を紹介していく構成は、子供たちの知的好奇心を自然と刺激します。タイのネェウ、インドネシアのテンペ、アフリカのオギなど、私たちには馴染みのない発酵食品が、写真とともに紹介されています。それぞれの食品の作り方が詳しく解説されているだけでなく、その地域の人々の生活や文化との関わりについても触れられており、単なる料理の紹介にとどまらない奥深さを感じます。

例えば、テンペの製造過程におけるカビの働きや、オギの原料となる穀物の種類、ネェウを作る際の独特な技術など、それぞれの発酵食品に特有の要素が丁寧に解説されています。これらの説明は、専門用語を避け、子どもにも分かりやすい言葉で書かれており、難しい概念も理解しやすくなっています。さらに、それぞれの食品の写真が豊富に掲載されているため、視覚的にも楽しめ、読み進めるモチベーションを高く保てます。

発酵の神秘:科学と文化の融合

本書では、納豆に限らず、発酵食品全般に関わる科学的な仕組みについても丁寧に解説されています。発酵に不可欠な微生物、特に納豆菌の働きが、分かりやすい図解と共に説明されており、抽象的な概念が具体的に理解できます。納豆菌がどのように大豆を発酵させて、独特の粘り気や風味を生み出しているのか、そのメカニズムを学ぶことで、私たちが普段何気なく食べている食品の裏側にある科学の不思議さを知ることができます。

しかし、本書は科学的な説明だけに留まりません。それぞれの発酵食品は、単なる食べ物ではなく、その地域の人々の生活や文化と深く結びついていることが強調されています。例えば、ネェウがタイの食卓に欠かせない存在であること、テンペがインドネシアの伝統的な食品として受け継がれていることなど、それぞれの発酵食品が人々の生活に根付いている様子が、写真や文章を通して伝わってきます。この点において、本書は科学と文化を融合させ、子どもたちに多様な世界観を提供していると言えるでしょう。

探究心を育む構成:自ら学び続ける姿勢を促す

本書の構成は、単に情報を伝えるだけでなく、子どもたちの探究心を育む工夫が凝らされています。例えば、各国の発酵食品を紹介する際に、その食品に関する疑問を投げかけたり、読者に自ら調べてみるよう促したりする箇所が散りばめられています。これらの工夫によって、子どもたちはただ受動的に情報を吸収するだけでなく、自ら学び、考える姿勢を養うことができるでしょう。

また、巻末には参考文献やウェブサイトの情報が掲載されており、より深く学びたい子どもたちにとって、貴重なリソースとなっています。これにより、本書は単なる読み物にとどまらず、さらなる探究への入り口となる役割を果たしていると言えるでしょう。

まとめ:身近な食材から広がる世界

「世界の納豆をめぐる探検」は、納豆という身近な食品を通して、微生物の世界、食文化の多様性、そして科学的な探究心といった、様々な学びを得ることができる良書です。子供たちにとって、読みやすく、そして興味深い内容が満載であり、食育の観点からも非常に優れた一冊です。 単に納豆について学ぶだけでなく、世界各地の文化や科学的な知識に触れることができるため、幅広い年齢層の子どもたちに推奨できる一冊だと考えます。 大人であっても、新たな発見や学びがある本だと思います。 発酵食品に興味がある方、食文化に興味がある方、そして子どもを持つ親御さんにも、自信を持っておすすめできる一冊です。 この本を通して、子どもたちが世界への好奇心と探究心を育んでくれることを願っています。