はむはむ絵本 ~2児のママがおすすめする絵本のご紹介~

3歳男の子と6歳女の子のママです。これまでに読み聞かせてきた絵本を紹介しています。

【読書感想文/レビュー】さかなってなにさ / せなけいこ

絵本の魅力を余すことなく伝える「さかなってなにさ」レビュー

せなけいこさんの絵本「さかなってなにさ」は、想像力豊かな物語と、独特のユーモラスな絵柄で、子供たちの心をしっかりと掴む作品です。読み終えた後には、心温まる感動と、新たな発見が待っていることでしょう。本レビューでは、この絵本の魅力を様々な角度から考察し、その素晴らしさを詳細に解説していきたいと思います。

海を知らないうさぎの、驚きと発見の物語

物語の始まりは、毎年家族で海水浴に行くものの、ぬいぐるみであるため海に入ることができないうさぎの姿から始まります。海を想像することすらできないうさぎにとって、魚の存在はまるで未知の領域です。他の動物たちが様々な角度から魚の生態を説明するも、うさぎの頭の中には、なぜかニンジンを模した奇妙な「魚」のイメージが固まってしまうのです。この、うさぎの独特な視点と、周囲の動物たちの説明とのギャップが、物語全体にユーモラスな雰囲気を醸し出しています。

せなけいこさんの絵柄は、このユーモラスな雰囲気をさらに強調しています。どこかコミカルな動物たちの表情や仕草、そして、うさぎの頭の中に浮かぶニンジン型「魚」の描写は、子供たちの笑いを誘うこと間違いありません。しかし、それは単なる滑稽さではなく、子供たちの想像力を刺激し、読み手に共感と親しみやすさをもたらす効果をもたらしています。

想像と現実の衝突、そして新たな視点

物語の中盤では、ついにうさぎが海へ入ることになります。今まで想像でしかなかった魚を目の当たりにしたうさぎの驚きは、言葉では言い表せない程でしょう。鮮やかな色彩で描かれた魚たちの姿は、読者にも海の生き物たちの美しさや多様性を改めて認識させてくれます。そして、この出会いはうさぎだけでなく、魚たちにとっても衝撃的な出来事だったはずです。初めて見るうさぎの姿は、きっと彼らにとっても驚きだったことでしょう。

この場面では、想像と現実のギャップが鮮やかに描かれています。うさぎが抱いていた「ニンジン型魚」のイメージと、実際に見た魚の姿との対比は、子供たちに想像力の大切さと、現実の奥深さを同時に教えてくれるでしょう。また、うさぎと魚、それぞれの異なる視点が交差する瞬間は、読者に新たな視点を与えてくれる、非常に示唆に富んだ描写です。

「うさぎってなにさ」という問い、そして共感

物語の最後に示唆される「うさぎってなにさ」という問いは、この絵本の重要なテーマの一つです。魚たちにとって、うさぎは想像を絶する存在だったはずです。この問いは、私たち人間が普段当たり前のように考えていること、そして、私たち自身を客観的に見つめ直す機会を与えてくれます。

この問いは、子供たちに「他者」への理解の重要性を優しく教えてくれます。私たち人間も、異文化や異なる生き物と出会った時、最初は戸惑うかもしれません。しかし、この絵本は、そのような出会いを前向きに捉え、相手を知ることで、新たな発見や共感を得られることを示唆しています。

まとめ:想像力と共感を育む、珠玉の絵本

「さかなってなにさ」は、単なる子供向け絵本ではありません。想像力豊かな物語、ユーモラスな絵柄、そして、深いメッセージ性が融合した、珠玉の作品です。子供たちは、この絵本を通じて、想像力の大切さ、現実の奥深さ、そして他者への理解を学ぶことができます。

読み聞かせを通して、子供たちと語り合う時間を持つこともできるでしょう。例えば、うさぎが想像していた「ニンジン型魚」について、子供たちに自由に意見を述べさせることで、想像力を刺激し、創造性を育むことができるでしょう。また、魚たちが初めてうさぎを見た時の気持ちについて想像を膨らませることで、共感力を養うことができるでしょう。

この絵本は、親子で一緒に読み、語り合い、想像力を膨らませることで、より一層その魅力が輝く作品です。せなけいこさんの繊細で温かい表現は、子供たちの心に深く響き、長く記憶に残る、忘れられない一冊となることでしょう。 心温まる物語と、ユーモラスな絵柄で、子供たちの豊かな感性を育む一助となること間違いありません。ぜひ、お子様と一緒にお楽しみください。