はむはむ絵本 ~2児のママがおすすめする絵本のご紹介~

3歳男の子と6歳女の子のママです。これまでに読み聞かせてきた絵本を紹介しています。

【読書感想文/レビュー】ライオンのこころ / レイチェル・ブライト・ジム・フィールド・安藤サクラ

ちっぽけなネズミと、大きなライオンのこころ:「ライオンのこころ」を読んで

「ライオンのこころ」は、小さなネズミと大きなライオンの対比を通して、自己肯定感と他者への理解の大切さを優しく語りかける絵本です。一見すると単純な物語ですが、その奥底には、子どもだけでなく大人をも深く考えさせる普遍的なテーマが潜んでいます。本書を読み終えた私は、登場人物たちの心情に寄り添い、そして自分自身の人生についても改めて考える機会を得ました。以下、本書の魅力を様々な観点から詳細にレビューさせていただきます。

ネズミの小さな声、大きな願い

主人公のネズミは、体が小さく、存在感も薄い存在です。誰からも見向きもされず、ふんだりけったりの日々を送っています。しかし、ネズミには大きな願いがありました。それは、「みんなに気づいてもらうこと」です。その願いを叶えるため、ネズミは驚くべき行動に出ます。それは、ライオンに「ほえる方法」を教わることでした。

このネズミの行動は、一見すると突飛で現実離れしているように見えるかもしれません。しかし、よく考えてみると、ネズミの行動には、自分を認められたいという強い願望と、その願いを叶えようとする積極的な姿勢が表れているのです。小さなネズミの大きな勇気に、読者は自然と心を動かされます。そして、ネズミの抱える悩みは、私たち自身の抱える悩みとどこか重なる部分があることに気づかされます。誰しも、存在感を認められたい、誰かに必要とされたいと願うものです。ネズミの純粋な願いは、私たちの共感を呼び起こし、物語に深い感動を与えてくれます。

ライオンの優しさ、真の強さ

一方、ライオンは、皆から憧れの的である、大きく強い存在です。しかし、ライオンはただ大きいだけでなく、ネズミの願いに優しく耳を傾け、丁寧に教えようとする、優しい心も持っています。ネズミの奇妙な願いを嘲笑したり、拒絶したりすることなく、真摯に向き合うライオンの姿は、読者に大きな安心感と感動を与えます。

ライオンの強さは、単なる身体的な強さではありません。ネズミの小さな声にも耳を傾け、その願いを尊重する、精神的な強さなのです。このライオンの姿は、真の強さとは何かを私たちに問いかけてきます。強さとは、力ずくで相手をねじ伏せることではなく、相手の気持ちに寄り添い、理解し、支えることにあるのではないでしょうか。ライオンとネズミの関係性は、真の強さとは何かを問いかける、本書の重要なテーマの一つと言えるでしょう。

異なる存在、共通の願い

ネズミとライオンは、体格や立場、そして社会的地位において全く異なります。しかし、二者には共通点もあります。それは、「認められたい」という願いです。ネズミは、誰かに気づいてもらいたいと願っており、ライオンもまた、周囲からの尊敬や憧れを必要としています。

この共通点は、私たちに大切なメッセージを与えてくれます。それは、人それぞれに個性があり、置かれている状況も異なるものの、誰もが「認められたい」という普遍的な願いを抱いているということです。そして、その願いは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、その願いこそが、私たちを成長させ、前へと進ませてくれる原動力となるのです。

言葉選びと絵柄の調和

本書の文章は、シンプルながらも力強く、そして温かい言葉で書かれています。特に翻訳の言葉選びには、細やかな配慮が感じられ、読者の心に優しく響く表現となっています。絵柄もまた、物語の世界観を見事に表現しており、ネズミとライオンの表情や仕草一つ一つに、それぞれの感情が繊細に描かれています。言葉と絵柄の調和は、本書全体の完成度を高め、読者に深い感動を与えてくれます。

特に、ネズミがライオンに会うシーンや、ライオンがネズミにほえることを教えるシーンなどは、絵柄と文章の相乗効果によって、物語の感動が最大限に引き出されていると言えるでしょう。読み進めていく中で、絵柄から読み取れる感情が、文章の持つ力強さをさらに増幅させていると感じました。

結論:人生の羅針盤となる絵本

「ライオンのこころ」は、単なる童話ではありません。自己肯定感の重要性、他者への理解、そして真の強さについて深く考えさせられる、人生の羅針盤となるような絵本です。子どもはもちろん、大人も読むことで、自分自身を見つめ直し、より豊かな人生を送るためのヒントを得ることができるでしょう。

本書は、私たちに「ありのままの自分を愛すること」「他者の気持ちに寄り添うこと」「真の強さを求めること」の大切さを教えてくれます。それは、年齢や立場に関わらず、誰にとっても大切なメッセージであり、この絵本を通して、多くの人が自分自身や周りの人々について、より深く理解できるようになるのではないでしょうか。 小さくて弱いネズミと、大きく強いライオン。一見対照的な二匹の物語は、実は私たちの心に深く響く普遍的な物語なのです。この絵本を、多くの人々に読んでほしいと心から願います。