はむはむ絵本 ~2児のママがおすすめする絵本のご紹介~

3歳男の子と6歳女の子のママです。これまでに読み聞かせてきた絵本を紹介しています。

【読書感想文/レビュー】ケーキ / 小西英子

絵本『ケーキ』:シンプルの中に秘められた、温かさのレシピ

絵本『ケーキ』は、そのタイトル通り、ケーキ作りの過程を丁寧に描いた一冊です。しかし、単なるレシピ本ではありません。絵本の持つ力、そして「食べ物」というテーマを通して、作者が伝えたい温かさや愛情が、ページをめくるたびにじんわりと伝わってくる、そんな作品だと感じました。

魅せられる、ケーキ作りの工程

まず、目を引くのは、そのシンプルながらも美しいイラストです。ボウルに卵を割り入れ、砂糖を加えて混ぜる様子、小麦粉やバターを順に加え、生地を丁寧に混ぜ合わせる様子…一つ一つの動作が、まるで目の前で実際にケーキ作りが行われているかのように鮮やかに描かれています。 「しゃか しゃか しゃか」という擬音語も効果的で、子供たちはもちろん、大人も思わず一緒にリズムを取りたくなるような、躍動感さえ感じられます。

生地を型に流し込み、オーブンで焼き上げるシーンも、実に魅力的です。徐々に膨らんでいく生地、そして焼きあがったスポンジケーキの、きめ細やかでふっくらとした様子は、見ているだけで幸せな気持ちになります。焼きあがったケーキにクリームを塗り、イチゴや様々なフルーツを飾り付ける様子は、まるで魔法を見ているようでした。一つ一つの動作に愛情がこもっており、見ているだけで心が温かくなるような、そんな描写です。

五感を刺激する、言葉と絵の調和

この絵本は、視覚的な情報だけでなく、他の感覚にも訴えかけてきます。先述の「しゃか しゃか しゃか」という擬音語は、聴覚に働きかけ、ケーキ作りの楽しさを伝えています。さらに、クリームを塗ったり、フルーツを飾ったりするシーンでは、その滑らかな質感やジューシーな香りが想像できるような、言葉選びと絵柄の巧みな調和が感じられます。まるで、焼き立てのケーキの甘い香りや、クリームのなめらかさ、そしてフルーツの瑞々しさを、実際に感じているかのような錯覚に陥るほどです。

そして、完成したケーキの美しさは、言葉では言い表せないほどの迫力があります。色鮮やかなフルーツが、丁寧に作られたスポンジケーキの上に美しく並べられています。その姿は、まるで芸術作品のようです。子どもたちがこのケーキを食べる時の喜び、そしてケーキを作った人の愛情が、この一枚の絵に凝縮されているように感じました。

「作る」ことの喜び、「食べる」ことの幸せ

この絵本は、単にケーキの作り方を紹介するだけでなく、「作る」ことの喜び、「食べる」ことの幸せを、子供たちに伝えています。ケーキを作る工程一つ一つに込められた愛情、そして完成したケーキを食べる時の満足感、それらが絵と文章を通して、自然と心に響いてきます。

子供たちは、この絵本を通して、ケーキ作りの楽しさだけでなく、食べ物を作る人の愛情や、みんなで一緒に食べる喜びを学ぶことができるでしょう。また、大人にとっても、この絵本は、日々の生活の中で忘れかけていた、些細な幸せや喜びを思い出させてくれる、そんな温かい一冊です。

シンプルだけど奥深い、普遍的な魅力

『ケーキ』は、内容がシンプルであるだけに、様々な解釈が可能です。例えば、ケーキ作りの工程は、人生の様々な出来事に例えることもできるかもしれません。一つ一つの材料を丁寧に混ぜ合わせるように、人生も一つ一つの経験を大切に積み重ねていく必要があることを、この絵本は暗に示唆しているようにも感じます。

また、完成したケーキをみんなで一緒に食べるシーンは、家族や友人との絆の大切さを改めて考えさせてくれます。みんなで同じものを食べ、喜びを分かち合う。そんなシンプルな行為の中にこそ、人生の大きな幸せが隠されていることを、この絵本は教えてくれているのかもしれません。

誰にでもおすすめできる、心温まる絵本

『ケーキ』は、小さい子供から大人まで、幅広い年齢層におすすめできる絵本です。子供たちは、可愛らしいイラストと楽しいストーリーに夢中になるでしょう。大人たちは、懐かしい気持ちや、日々の生活の中で忘れかけていた大切なものを見つけることができるはずです。

シンプルな絵柄と文章の中に、深い愛情とメッセージが込められたこの絵本は、何度読んでも新しい発見があり、心温まる感動を与えてくれるでしょう。 絵本としての完成度も高く、読み終えた後の満足感も非常に高いです。まさに、絵本として完成された、珠玉の一冊と言えるのではないでしょうか。 お子様へのプレゼントはもちろん、自分自身へのご褒美としても、この絵本を手に取ってみてはいかがでしょうか。きっと、心に残る素敵な時間になるはずです。